藤島大 文藝春秋
『Number』誌に掲載された様々なスポーツやそれに関わる人物のノンフィクション.
著者の鋭い分析眼は、しかし、こんな類のスポーツの読み物にありがちな決めつけはしない.
決めつけはしない分、読者にあれこれと考えさせる.
例えば、日本女子バレーの現在の低迷はコーチングにあるのではないか.
そんなことは本文に全く書かれていないのに、晩年は醜聞にまみれた山田重雄についての取材記事からそんなことが浮かび上がってくる.本文の趣旨とはずれるけど.
そして、著者の決して大げさにならない静かな筆致は、読む者にじわじわと深い感動を呼び起こしてくれる.
声に出して読みたい日本語に推薦.
吉田義人「脚光と不遇の果てに」の最後の部分より引用:
< 明治大学ラグビー部終身監督、享年95、かの北島忠治は取材者につぶやいた.
「あいつは、ひとりぼっちだな」
吉田義人、新入生の春である.
そして、すでに決めていた.キャプテンはこいつだ.待ち焦がれて、3年に進んだところで「吉田主将」と宣してしまったほどだ.すぐそこの温かい懐を必要としないから、特大の包容だけが求められる.吉田義人は動かなくていい.器用、不器用、小さい、小さい.問われるのは我々の側の度量である.明治生まれの巨人、北島忠治は包むでなく包んだ.ひとりぼっちは、ひとりぼっちだから、ひとりではなかったのである.>
あー、自分の職場にも特大でなくてもいいから「包容」がほしい.
状況が分からない人に説明すると、今の職場では、ボスに直接話しかけると後で中間管理職の上司に怒られる(理由は色々でしょうが).
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